January 2026
席はあるか
去年の秋、一緒に仕事をしているデザイン会社の展示を手伝うため、オランダを訪れた。アイントホーフェンで開催された「Dutch Design Week」というデザインイベントへの出展で、現地での設営から会期中の在廊まで一通りに関わることになり、滞在は10日間とやや長くなった。滞在中、ロッテルダムにある「FENIX」という美術館にも足を運んだ。「移民」をテーマにした施設で、同じ展示のメンバーが行くことを強く勧めていたので、気になっていた場所だった。
Shuto Umemura
Art director/Graphic Designer
Tokyo
January 2026
席はあるか
去年の秋、一緒に仕事をしているデザイン会社の展示を手伝うため、オランダを訪れた。アイントホーフェンで開催された「Dutch Design Week」というデザインイベントへの出展で、現地での設営から会期中の在廊まで一通りに関わることになり、滞在は10日間とやや長くなった。滞在中、ロッテルダムにある「FENIX」という美術館にも足を運んだ。「移民」をテーマにした施設で、同じ展示のメンバーが行くことを強く勧めていたので、気になっていた場所だった。
September 2025
個人事業主
とても地味な理由から、個人で仕事をするようになった。デザイナーという職種は一貫して変わらないのだが、転職はこれまでに何度か経験している。キャリアを重ねていくと、こんな自分にも昔のよしみで引き続きデザインの依頼をくれたり、相談をしてくれる人が現れ、会社員だった当時は「副業」という形ではあるものの、受けられる範囲で精一杯応えてきた(本当に、本当に感謝している)。しかし、社会通念的に会社員にとって優先すべきものは本業で、個人の仕事は文字通り「副業」となるので、業務時間外にやるのは当然としても、会社への申告義務があったり、一律で禁止されていたりするのが実情だった。そうした中でも個人の仕事を大手を振って堂々とやるために、ある時はなけなしの有給を使い、ある時は会社を通して利益をすべて捧げたり、今思えば実に涙ぐましい方法で「会社への妙に後ろめたい思い」を凌いでいた。
August 2025
おとな
港などの堤防に立つと、つい水の中を覗いてしまう。小さなイワシの群れやミズクラゲ、アオリイカの子供。その下で時折体をくねらせるチヌやグレの黒い影、少し遠くをゆっくり通り過ぎていくアカエイ。明け方の灯りの下ではシャコが泳いでいたり、まれに小さなサメの姿も現れる。どんなに体が小さくても、サメはサメらしい緊張感をまとって泳いでいる。
August 2025
バイクシェア
僕はバイクシェアというサービス日常的に利用している。簡単に説明すると、街中に設置されているポートから自転車を借りることができる仕組みだ。(どうやら今年で10周年らしい)「自宅の近くにあるから」という都合のいい理由も含めて、僕はこのサービスをとても気に入っている。まず、「バイクシェア」というサービス名について語りたい。
July 2025
構想中
僕が高校生くらいの時、祖父がボケた。ちょうど甲子園の時期だったと思う。家族で祖父母の家に帰省した。親戚同士の距離があまり近い方ではなかったので、その日も、祖父母に会うのは久しぶりだった。いつもの茶の間で、僕と両親、そして祖父母の五人で、今年の愛工大名電はどうだったとか、地元の高校野球などの他愛ない話をしていた時、祖父が突然、「俺は今、あることを考えている。」と言い出した。
July 2025
とりあえず置いといて
僕が通っているジムは、どちらかと言えば年配の方が多く、他の海外マッチョ系のジムに比べてゆっくりとした時間が流れている。ある日、フリースペースでスクワットをするお爺さんと若い女性スタッフが話をしていた。女性の使う大胆なタメ口に、無関係な自分がヒヤヒヤしてしてしまったのだが、お爺さんは特に気にしていない様子で、むしろ少し嬉しそうだった。女性スタッフは、普段よりやや深めのスクワットを披露するお爺さんの見栄(あるいは下心)を、見透かしているようだ。もちろん、両者の本心などわかりはしないのだが。僕には、彼女のようにお爺さんが自然と頑張ってしまうような魅力はないし、目上の人にタメ口を使う勇気はないけれど、歳の割にスクワットが深いということで、女性の気を惹こうとする彼の浅はかな魂胆にはしっかりと共感した。これは別に、良い光景というわけでも、悪い光景というわけでもないが、日々をなんとなく暮らしていると、こういうただの記憶、記憶として現像されるもっと前の状態の「像」のようなものが、いつかのレシートがポケットから出てくるように、ふと現れることがある。そして、スマホをいじったりしているうちにまた消えて、思い出したこと自体も忘れたら、二度と思い出すこともない。